学校法人会計でよく問題になるのが、教育研究経費か?それとも、管理経費か?の区分です。
迷ったときは「生徒のための経費か?」という基準で考えましょう。
たとえば、図書券をごほうびとして生徒に配った場合は「教育研究経費」です。来校者へのプレゼントとして配っている場合は「管理経費」となります。
唯一注意しておきたいのが、生徒募集にかかわる経費。これは「管理経費」となります。
理由としては、募集経費はいわば宣伝目的にすぎず、教育としての経費性が乏しいからではないかとおもわれます。
学校法人会計問答集(Q&A)第6号
教育研究経費と管理経費の区分について
昭和61年7月8日 日本公認会計士協会 学校法人委員会
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(質問1)
文部省通知(雑管第118号,以下「通知」という。)の「次の各項に該当することが明らかな経費は,これを管理経費とし,それ以外の経費については主たる使途に従って教育研究経費と管理経費のいずれかに含めるものとする。」は,どのように解釈するのでしょうか。
(答)
「通知」の文言は,次のように解釈するのが妥当である。
(1)「通知」の報告別紙に限定列挙されている1~7の各項に該当することが明らかな経費は必ず管理経費(支出)とする。
したがって,1~7に列挙されている経費で,例えば光熱水費のように教育研究用及び管理用の双方に関連しているものについては,それぞれ直接把握するか,その使用割合など合理的な配分基準によって按分する。
(2)1-7に列挙されていない経費,例えば私学団体関係費のようなものは,その主たる使途に従って教育研究経費(支出)か管理経費(支出)のいずれかに処理する。
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(質問2)
建物等の取壊し費用の会計処理については,教育研究経費と管理経費のいずれに処理すべきでしょうか。
(答)
(1)従来より使用していた固定資産の除却等により取壊しのための支出が生じた場合は,取壊しの対象となった資産の使途に応じて経費処理する。
すなわち,教育研究関係の固定資産の取壊し費用は,教育研究経費(支出)とし,管理関係の固定資産の取壊し費用は,管理経費(支出)として処理する。
(2)以上の考え方に対して,教育研究諸活動の維持・継続のための支出か否かを重視して,取壊しにより教育研究活動が停止する場合には教育研究経費(支出)とすべきではないとする有力な見解もあるので,取壊し経費の経費区分の原則的考えは,上記(1)によるのが妥当であるが,建物等の取り壊し後の土地を教育研究関係から管理関係へ使途変更する場合には,管理経費(支出)処理を認めるものとする。
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(質問3)
質問2で,建物等の取壊し経費は経費処理すると回答していますが,土地とともに取得した建物を取壊した場合も同様の処理でよいのでしょうか。
(答)
自ら土地を利用する目的で土地付き建物を取得し,その建物を取壊した場合には,取壊しに当たって生じた支出を経費処理せずに,土地の取得価額に算入する。
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(質問4)
学校法人会計基準によると補助活動事業として食堂,売店,寄宿舎等を挙げていますが,それらの事業に係る経費については,教育研究経費に処理するのか,それとも管理経費に処理するのか,見解がはっきりしていないようですが,どのような処理がよろしいのでしょうか。
(答)
(1)食堂,売店及び全寮制以外の寄宿舎に係る経費(支出)は管理経費(支出)とし,全寮制寄宿舎に係る経費(支出)は教育研究経費(支出)とする。
(2)上記(1)でいう全寮制とは,教育研究目的により1年生全員の寄宿を義務付ける等の場合をいうのであって,単に遠隔地からの学生の一部に対して寄宿舎を用意しておく場合は含まれない。
(3)上記(1),(2)以外の補助活動事業に係る経費区分は寄宿舎事業の区分の考え方を準用する。
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(質問5)
質問4の考え方は事業収入の科目に含まれる小科目で処理されるすべての事業に適用されるのですか。それとも補助活動収入に処理される事業に限られるのですか。
(答)
補助活動収入に処理される事業に限る。
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(質問6)
公開講座,課外講座等の収入は,(大科目)事業収入(小科目)補助活動収入で処理されている場合が多いようですが,これらの事業に係る経費も質問4と同じ取扱いとするのでしょうか。
(答)
補助活動事業としては,次のような事業が一般的に挙げられる。
(1)食堂,売店,寄宿舎等の事業
(2)税務上は収益事業と考えられるが,寄付行為で収益事業として定めていない事業
(3)学校教育のカリキュラムの中では,取り扱われていない本質間のような教育補完事業等
(1)と(2)の事業は,正に質問4の取扱いが求められるが,(3)の事業についてはそのまま質問4の取扱いを適用するには無理がある。
したがって,本質問のような学校教育の補完として考えられるような事業で,かつ,事業収入(大科目)の中に補助活動収入とは別の小科目(例えば「公開講座収入」)を設けてその科目で収入を処理しているものについては,質問4の取扱いを適用せず,教育研究経費(支出)処理を認めるものとする。この考え方によると,収入の処理科目によってその経費(支出)が教育研究経費(支出)か,管理経費(支出)かに区分されて処理されるので,上記の科目細分については十分な注意が肝要である。
なお,この場合,同じような名称を用いながら,その内容は千差万別のことが多々あるので事業の的確な実体把握に留意されたい。
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(質問7)
幼稚園では,給食,スクールバス等の事業が実施され,それらの事業の収入も補助活動収入で処理されていることが多いようですが,これらの事業に係る経費も質問4と同じ取扱いによるのでしょうか。
(答)
給食事業もスクールバス事業も,いずれの事業もそれなりに教育的意味を持っていることを考慮すると,質問4の取扱いをそのまま適用することには大変難しい問題を含んでいるのは質問6と同様である。給食事業やスクールバス事業の教育性の有無については,種々の主張があり,その性格付けは難しいところであるが,今回の実務問答集は,経費(支出)の区分の割り切りにあるので,これらの事業についても質問4の取扱いと同様に考えている。
なお,この考え方は,給食,スクールバス等の事業に係る収入を「補助活動収入」と必ずしも限定することではない。よって,その合理性が認められる限り当該事業収入を学生生徒等納付金(収入)で処理することも認められる。