従来の学校法人会計で、ソフトウェアについては「応用ソフト」「基本ソフト」というおおまかな区分がなされ積極的に資産計上されていませんでした。昨今の改訂で、ソフトウェアの取り扱いは大きく変わりました。
根本的方向としては、企業会計におけるソフト会計の取り扱いに従う形で改正がなされました。企業会計でいう「研究開発用ソフト」ないし「販売用ソフト」は「教育研究用ソフト」、そして「自社利用のソフト」は「事務用ソフト」に近い形で取り扱いが整備されました。
資産計上されることで、第一号基本金の計上に影響するケースが往々にしてありうると考えられますので十分ご注意ください。
ソフトウェアに関する会計処理について(通知)20高私参第3号
平成二十年十月九日文部科学大臣所轄各学校法人理事長殿各都道府県知事殿文部科学省高等教育局私学部参事官豊岡 宏規 学校法人会計におけるソフトウェアの今後の取扱いについては,下記のとおりですので,十分御了知の上,適切な会計処理をお願いします。
なお,日本公認会計士協会がこの通知に係る実務指針等を公表する予定ですので,御参照ください。
また,各都道府県知事におかれては,所轄の学校法人及び私立学校法第64条第4項の法人に対して周知されるようお願いします。
記
1 趣旨及び目的
学校法人会計におけるソフトウェアの会計処理については,従来より,経費として処理されてきたところであるが,近年,学校法人の教育研究活動や管理運営業務において,ソフトウェアの果たす役割が重要性を増していることを踏まえ,また,ソフトウェアがファイナンス・リース取引の対象となる場合の会計処理について,「リース取引に関する会計処理について」(平成20年9月11日付け20高私参第2号文部科学省高等教育局私学部参事官通知)との整合性を確保するため,ソフトウェアに関する会計処理の取扱いの統一を図ることとした。
2 用語の定義
「ソフトウェア」とは,コンピュータを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム及びこれに関連する文書をいう。
3 会計処理
(1) ソフトウェアについては,その利用により将来の収入獲得又は支出削減が確実であると認められる場合には当該ソフトウェアの取得に要した支出に相当する額を資産として計上し,それ以外の場合には経費として処理する。
学校法人において利用されるソフトウェアには,教育研究の質的向上等の目的で利用される教育研究用ソフトウェアと学校法人の効率的な運営等に資する目的で利用される事務用ソフトウェアがある。教育研究用ソフトウェアは,その利用に伴い外部より相当額の利用料を徴収する等の例外的なものを除き,将来の収入獲得又は支出削減が確実であると認められない場合が多く,この場合には経費として処理する。一方,事務用ソフトウェアは業務の効率化のために使用することが多く,それによって支出削減が確実であると認められる場合には資産として計上する。
(2) 機器備品等に組み込まれているソフトウェアは,両者が別個では機能せず一体としてはじめて機能するものであり,経済的耐用年数も相互に関連性が高いことから,原則として両者を区分せず,当該機器備品等に含めて処理する。
(3) 上記3(1)に基づいて資産として計上するソフトウェアは,学校法人の採用する固定資産計上基準額以上のものとする。
(4) 固定資産に計上したソフトウェアの耐用年数は,学校法人が当該ソフトウェアの利用の実態等を勘案して,自主的に決定することとする。
(5) なお,ソフトウェアについてファイナンス・リース取引をした場合,「リース取引に関する会計処理について」(平成20年9月11日付け20高私参第2号文部科学省高等教育局私学部参事官通知)の3(1)アからウまでに該当する場合を除き,通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行うこととなり,その会計処理は,上記3(1)のとおり,その利用により将来の収入獲得又は支出削減が確実であると認められる場合には当該ソフトウェアの取得に要した支出に相当する額を資産として計上し,それ以外の場合には経費として処理することとなる。
4 計算書類の表示
ソフトウェアを資産として計上する場合には,資金収支計算書では「設備関係支出」の小科目として「ソフトウェア支出」等,貸借対照表では「その他の固定資産」の小科目として「ソフトウェア」等の適切な科目を設けて処理することとする。
5 適用
この通知による取扱いは,平成21年4月1日以降に購入等されるソフトウェアについて適用する。
学校法人委員会報告第42 号
「ソフトウェアに関する会計処理について(通知)」に関する実務指針
平成21 年1月14 日
日本公認会計士協会
目 次
はじめに…………………………………………………………………. 1
Ⅰ 会計処理……………………………………………………………… 1
1-1 将来の収入獲得又は支出削減が確実であると認められる場合……………….. 1
1-2 事務用ソフトウェアを経費処理した場合……………………………….. 1
1-3 学内制作したソフトウェアの処理…………………………………….. 1
1-4 教育研究と販売の両方の利用目的があるソフトウェアの会計処理……………. 2
1-5 コンピュータの購入に伴い取得した基本ソフトウェアの会計処理……………. 2
1-6 コンテンツを購入した場合の会計処理…………………………………. 2
1-7 機器備品等に組み込まれているソフトウェア……………………………. 2
1-8 ソフトウェアを除却した場合の会計処理……………………………….. 3
1-9 ソフトウェアと少額重要資産の考え方…………………………………. 3
1-10 ソフトウェアをグループ償却することの適否……………………………. 3
1-11 バージョンアップが行われた場合の会計処理……………………………. 3
1-12 ソフトウェアの保守料を支払った場合の会計処理………………………… 3
Ⅱ 表示…………………………………………………………………. 4
2-1 表示科目………………………………………………………… 4
2-2 固定資産明細表への記載……………………………………………. 4
Ⅲ その他……………………………………………………………….. 4
3-1 「購入等」の考え方……………………………………………….. 4
3-2 リース通知とソフト通知の適用関係…………………………………… 4
Ⅳ 適用…………………………………………………………………. 5
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はじめに
近年、学校法人の教育研究活動や管理運営活動において、ソフトウェアの果たす役割が重
要性を増していることを踏まえ、文部科学省から「ソフトウェアに関する会計処理について
(通知)」(20 高私参第3号、以下「通知」という。)が平成20 年9月11 日付けで発出され
た。当該通知を受け、日本公認会計士協会は、通知を実務に適用するに当たっての具体的な
指針を本報告に取りまとめた。
Ⅰ 会計処理
1-1 将来の収入獲得又は支出削減が確実であると認められる場合
Q 通知の3(1)では、「ソフトウェアについては、その利用により将来の収入獲得又は支出
削減が確実であると認められる場合には当該ソフトウェアの取得に要した支出に相当する
額を資産として計上し、それ以外の場合には経費として処理する。」としていますが、「将
来の収入獲得が確実」「支出削減が確実」とは、具体的にはどのように判断すべきですか。
A 将来の収入獲得又は支出削減が確実であると認められる状況は、利用の実態により様々
であると考えられる。
将来の収入獲得が確実であると認められる場合とは、例えば、ソフトウェアの機能を学
生生徒等に提供することによって学生生徒等から利用料を徴収する場合、インターネット
予約システムを導入し予約増による施設設備利用料等の収入増が確実に認められる場合、
学校法人が制作したソフトウェアを外部に販売する場合などが該当すると考えられる。
一方、将来の支出削減が確実であると認められる場合とは、例えば、学籍管理、履修登
録、成績管理、人事管理・給与計算又は会計処理などのソフトウェアの導入により、業務
が効率化し、利用する前に比べ人件費、経費の削減効果が確実に見込まれる場合が該当す
ると考えられる。
判断に当たっては、ソフトウェアを利用している実態を十分に把握して、資産計上の要
件を満たしているか否かについて検討する必要がある。
1-2 事務用ソフトウェアを経費処理した場合
Q 通知の3(1)では、「学校法人において利用されるソフトウェアには、教育研究の質的向
上等の目的で利用される教育研究用ソフトウェアと学校法人の効率的な運営等に資する目
的で利用される事務用ソフトウェアがある。」としていますが、事務用ソフトウェアを経費
処理した場合、管理経費になるのでしょうか。
A 事務用ソフトウェアには教育研究用に使用するものと管理用に使用するものが考えられ、
経費処理する場合であっても、必ずしも管理経費にはならず、教育研究経費になる場合と
管理経費になる場合がある。
1-3 学内制作したソフトウェアの処理
Q ソフトウェアを学内制作する場合、資産計上する費用の範囲や集計すべき期間を教えて
ください。
A ソフトウェアの制作開始時においては、ソフトウェアの利用者が要求する機能を発揮す
るソフトウェアが完成し、かつ、実際の業務での使用に耐えられるかについて、確実に判
断することには困難を伴うことが考えられる。したがって、将来の収入獲得又は支出削減
が確実であると認められる状況になったとき、ソフトウェア仮勘定などの資産科目への計
上を開始する。このソフトウェア仮勘定などへの集計開始時点は、将来の収入獲得又は支
出削減が確実であることを立証できる証憑に基づいて決定する。そのような証憑としては、
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例えば、ソフトウェアの制作が承認された稟議書又はソフトウェアの制作のための経費を
集計するための制作番号を記入した管理台帳等が考えられる。なお、将来の収入獲得又は
支出削減が確実であると認められた時点から過去にさかのぼって、ソフトウェアの制作の
ための経費を資産計上することは認められない。
また、ソフトウェア仮勘定などへの費用の集計は、実質的にソフトウェアの制作作業が
完了したと認められる状況になったときまでであり、制作作業が完了したことを立証でき
る証憑に基づいて決定する。そのような証憑としては、例えば、ソフトウェア作業完了報
告書、最終テスト報告書等が考えられる。
集計する経費の範囲については、資産計上開始時から終了時までの人件費、教育研究経
費及び管理経費であり、データコンバート費用、トレーニング費用は集計しない。
なお、財務分析等に当たっては、ソフトウェア勘定に人件費及び経費等が含まれている
ことに留意されたい。
1-4 教育研究と販売の両方の利用目的があるソフトウェアの会計処理
Q 教育と販売の両方の目的があるソフトウェアの会計処理はどうなりますか。
A ソフトウェアを資産計上する要件は、「将来の収入獲得又は支出削減が確実」な場合であ
る。このため、教育研究又は販売のいずれかの目的について、上記要件を満たすと判断さ
れる場合には、ソフトウェア原価相当額を目的に応じて按分することなく、総額が資産計
上されることになる。
毎年度の減価償却額については、適切な配分基準により教育目的部分は教育研究経費と
し、販売目的部分は管理経費に計上することになる。
1-5 コンピュータの購入に伴い取得した基本ソフトウェアの会計処理
Q コンピュータの購入に伴い取得した基本ソフトウェアの会計処理はどのようにするので
すか。
A コンピュータのハード本体は基本ソフトウェアがあって初めて動作を行うことが可能と
なるので、基本ソフトウェアを購入時において明確に区分できるかどうかを問わず、当該
コンピュータのハード本体に含めて処理することになる。
すなわち、ハード本体と基本ソフトウェアを一体として学校法人の採用する固定資産の
計上基準により判定し、機器備品に計上するか、経費処理する。
1-6 コンテンツを購入した場合の会計処理
Q コンテンツを購入した場合、どのように会計処理するのですか。
A ソフトウェアがコンピュータに一定の仕事を行わせるプログラム等であるのに対し、コ
ンテンツはその処理対象となる情報の内容である。コンテンツの例としては、データベー
スソフトウェアが処理対象とするデータや、映像・音楽データ等を掲げることができる。
したがって、コンテンツは、図書と類似の役割を有するものと考えられるので、利用の
態様に従い、図書に準じて処理する。
1-7 機器備品等に組み込まれているソフトウェア
Q 通知3(2)では、機器備品等に組み込まれているソフトウェアは、「原則として両者を区
分せず、当該機器備品等に含めて処理する。」とされていますが、購入時にインストールさ
れている基本ソフトウェアだけでしょうか、購入後にインストールするものも含むのでし
ょうか。
A 機器備品等の購入時に既に組み込まれている基本ソフトウェアは、両者が別個では機能
せず一体としてはじめて機能するものであり、両者を区分せず機器備品等に含めて処理す
- 3 -
る。購入後にインストールした場合も同様である。
なお、組み込み済みの応用ソフトウェアについては、ハード部分とソフト部分を明確に
区分することができない場合には、両者を区分せず機器備品等に含めて処理する。これに
対して、購入後にインストールした応用ソフトウェアは機器本体とは明らかに区分できる
ものであり、機器備品等に含めての処理は行わない。
1-8 ソフトウェアを除却した場合の会計処理
Q ソフトウェアを除却した場合の会計処理はどのようにすればよいのですか。
A ソフトウェアを償却途中で除却した場合の会計処理は、有形固定資産を除却した場合と
同様に、未償却残高を消費支出として処理することとなる。この場合、計算書類には、大
科目「資産処分差額」に「ソフトウェア処分差額」等の小科目を設けて表示することが適
当である。
1-9 ソフトウェアと少額重要資産の考え方
Q ソフトウェアについても、少額重要資産の考え方は適用されるのでしょうか。
A 個々には少額なソフトウェアであっても、将来の収入獲得又は支出削減効果が確実であ
ると認められ、かつ、少額重要資産すなわち「学校法人の性質上基本的に重要なもので、
その目的遂行上常時相当多額に保有していることが必要とされる資産」に該当するもので
あれば、少額重要資産として取り扱うこととなる。
1-10 ソフトウェアをグループ償却することの適否
Q ソフトウェアについてもグループ償却を行うことは可能でしょうか。
A 事務手続の簡素化のため、ソフトウェアの減価償却についても、取得年度ごとに同一耐
用年数のものをグループ化し、一括して毎会計年度償却をし、耐用年数の最終年度に一括
除却処理を行うグループ償却の方法によることができる。
1-11 バージョンアップが行われた場合の会計処理
Q 現在使用しているソフトウェアについて、バージョンアップが行われた場合、どのよう
に会計処理すべきですか。
A ソフトウェアのバージョンアップは機能維持活動とは明確に区分され、大きく次の2種
類に分けられる。
① 仕様の大部分を作り直す大幅なバージョンアップ
② 既存の製品に機能を追加する又は操作性を向上するなど、それほど大幅ではないバ
ージョンアップ
①、②のいずれも、新規のソフトウェアの購入等と同様に、将来の収入獲得又は支出削
減が確実と認められる場合には資産として計上し、それ以外の場合には経費として処理す
る。なお、現在使用しているソフトウェアが資産計上されていない場合であっても、バー
ジョンアップ後のソフトウェアによって将来の収入獲得又は支出削減が確実と認められる
場合には、これに要した支出は資産計上されることになる。
1-12 ソフトウェアの保守料を支払った場合の会計処理
Q ソフトウェアの保守料を支払った場合、どのように会計処理をすべきですか。
A ソフトウェアの保守は、ソフトウェアの設置や稼動確認作業及び操作指導など一定期間
のサービスであり、保守料はそのサービスの対価と考えられる。
したがって、当該ソフトウェアの保守料は、時の経過とともに経費処理する。
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Ⅱ 表示
2-1 表示科目
Q 通知4では、ソフトウェアを資産計上する場合には、「ソフトウェア」等の適切な科目を
設けて処理することになっていますが、「教育研究用機器備品」と「その他の機器備品」の
ように教育研究用とその他とに区分して表示してもよいでしょうか。
A 通知4では「ソフトウェア」等の適切な科目を設けて処理することとなっており、勘定
科目を「ソフトウェア」に限定しているわけではなく、学校法人が小科目を設定すること
は任意であり、「教育研究用ソフトウェア」と「その他のソフトウェア」に分類して表示す
ることも差し支えない。
2-2 固定資産明細表への記載
Q ソフトウェアの固定資産明細表への記載はどうなるのでしょうか。
A 次のように「その他の固定資産」の小科目として記載することとなる。
Ⅲ その他
3-1 「購入等」の考え方
Q 通知による取扱いは、平成21 年4月1日以降に購入等されるソフトウェアについて適用
するとされていますが、購入等にはどのようなものが該当するのでしょうか。
A 購入等には、購入のほかに、リース契約による取得、学内制作が考えられる。
なお、リース契約による取得の場合、リース取引開始日が平成21 年4月1日以降のリー
ス取引から適用される。
また、学内制作の場合には平成21 年4月1日以降に制作が終了し利用を開始したソフ
トウェアから適用されることになる。
3-2 リース通知とソフト通知の適用関係
Q ソフトウェアをリース取引により取得した場合、リース通知とソフト通知の適用関係は
どのようになるのですか。
A 通知3(5)によれば、ソフトウェアについてファイナンス・リース取引をした場合、「リ
ース取引に関する会計処理について(通知)」(平成20 年9月11 日 20 高私参第2号)の3
(1)①アからウまでに該当する場合を除き、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理
を行い、その会計処理について当通知を適用することとされている。
したがって、リース物件がソフトウェアであっても、リース取引通知の3(1)①アからウ
科 目 期首残高 当期増加額 当期
減少額
期末残高 減価償却額の
累計額
差引期末
残高
有形固定資産
計 30,000,000 1,200,000 0 31,200,000 20,240,000 10,960,000
ソフトウェア 500,000 0 0 500,000 200,000 300,000
その他の
固定資産
計 500,000 0 0 500,000 200,000 300,000
合計 30,500,000 1,200,000 0 31,700,000 20,440,000 11,260,000
- 5 -
に該当し、通常の賃貸借取引に準じた会計処理をする方法を選択した場合には、賃貸借取
引に係る方法に準じた会計処理を行うこととなる。
なお、ソフトウェアについての両通知の適用関係をフローチャートで示せば次のとおり
である。
NO YES
NO YES
NO YES
※1 少額重要資産の判定を含む。
Ⅳ 適用
本報告は、平成21 年4月1日以降に購入等されるソフトウェアについて適用する。なお、
平成21 年3月31 日以前に購入等するソフトウェアについては、従来どおりの取扱いとす
る。
以 上