関連当事者との取引は決算書において注記対象となります。会計監査の対象となりますが、それ以前に学校の事務局で把握しておく必要があります。具体的な手順は、どうなるのでしょうか?
理事・監事に対しては、3月に開催される年度最終理事会(補正予算・次年度予算の決議が目的)において該当するか否か確認書を配布し、決算後になって該当者から回収するのが望ましいとおもわれます。
教職員に対しては、人数が多いので個別に対応するというのは実務的には困難かもしれません。グループウェアを導入している法人では一斉連絡が可能ですが、それが困難な場合は掲示板・回覧板などで注意喚起しておくことが望ましいでしょう。
ようは学校法人の事情にあわせ、やりやすい方法で必ず一度は全員に知らせておくことが重要です。
学校法人基準改正Q&A
Q9 関連当事者との取引(範囲)
関連当事者の把握は具体的にはどのように行えばよいか?また,把握は毎年行わなければならないか?
A9 学校法人が関連当事者を把握するための役員及び職員に対する調査表の参考例を示すが,これについては,各学校法人の規模や実態に応じ,適切に処理されたい。
また,例えば,調査表による記入は役員に限定し,教職員については,学内掲示板・イントラネットなどで周知を徹底し,該当者には申し出てもらうというような方法も考えられる。
しかし,初めて調査する場合には,学校法人が関連当事者を正確に把握する上でも書面による調査を行うことが望ましい。この場合,初回調査後は変更があった場合のみ,調査表を提出してもらう方法も考えられる。
Q10 関連当事者との取引(範囲)
「配偶者又は2親等以内の親族」に「養子」,「養父母」は含まれるか?
A10 養子,養父母も戸籍上,2親等以内の親族となるため,関連当事者に該当する。
Q11 関連当事者との取引(関係法人)
参事官通知Ⅱ(6)②アでは,「一方の法人の役員若しくは職員等が,他方の法人の意思決定に関する機関の構成員の過半数を占めていること」とあるが,この「職員等」は具体的に何を指しているのか?
A11 役員若しくは職員等の「等」とは,役員・職員(教育職員及び事務職員)以外の者で,顧問,相談役その他これに類する者で,法人内における地位,職務等からみて実質的に法人の経営に重要な影響を及ぼしていると認められる者が考えられ,評議員などは各学校法人の実態に応じて判断されたい。
なお,役員若しくは職員については,常勤・非常勤を問わない。
Q12 関連当事者との取引(関係法人)
参事官通知Ⅱ(6)②アでは,「意思決定に関する機関」とあるが,どのような機関か?
A12 「意思決定に関する機関」とは,株主総会,取締役会,理事会その他これらに準ずる機関をいう。
Q13 関連当事者との取引(関係法人)
参事官通知Ⅱ(6)②ウでは,「法人の意思決定に関する重要な契約等が存在すること」とあるが,どのような契約が該当するか?また,「契約等」の「等」は,何を意味しているか?
A13 例えば,重要な施設の無償提供,系属校との協定などが法人の意思決定に関する重要な契約と考えられ,「等」は,覚書,念書等が考えられる。
Q14 関連当事者との取引(関係法人)
提携関係にある学校・系列校(いわゆる姉妹校,グループ校)で,①役員は兼務している者もいるが,過半数は占めていない,②行事,施設利用,単位互換等についての関係はあるが,資金調達関係はない場合は,関連当事者に該当するのか?
A14 参事官通知Ⅱ(6)②では,「関連当事者との取引の注記の対象となる関係法人とは,一定の人的関係,資金関係等を有する法人をいい,具体的には,ア.一方の法人の役員若しくは職員等が,他方の法人の意思決定に関する機関の構成員の過半数を占めていること,イ.法人の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額の過半について融資を行っていること,ウ.法人の意思決定に関する重要な契約等が存在することが該当することo」とある。
したがって,質問の場合,上記のア又はイに該当しなくても,ウに該当する場合は,関連当事者となる。
ただし,財務上又は事実上の関係から法人の意思決定に関し重要な影響を及ぼさないことが明らかな場合には対象外となる。
Q15 関連当事者との取引(学校法人の出資による会社)
学校法人の出資による会社に該当し,かつ,関連当事者にも該当する会社が,当該会計年度中に解散した場合,あるいは出資比率が低くなった場合,学校法人の出資による会社として注記及び関連当事者として注記はどのように取り扱えばよいのか?
A15 学校法人の出資割合が二分の一以上の会社については,「学校法人の出資による会社に係る事項」として注記するため,当該会社が関連当事者であっても「関連当事者との取引」の注記事項としては扱わないこととされているが,学校法人の出資による会社は,学校法人の年度末(3月31日)における出資割合が二分の-以上の場合に記載することとなっているため,質問の場合は,学校法人の出資による会社の注記には該当しない。
一方,関連当事者との取引の注記に該当するか否かは,個々の取引の開始時点で判定するものとされており,当該会社が会計年度中に関連当事者に該当しなくなった場合には,関連当事者に該当している間の取引について関連当事者との取引として注記しなければならない。
Q16 関連当事者との取引(注記の基準)
経理規程に基づいて,一定額以上の取引については,3社以上の見積りを取ることとなっている。このような指名競争入札の場合,注記が必要か?
A16 一般競争入札の範囲に該当しない指名競争入札は注記を要する。
なお,一般競争入札とは,どの者も自由に入札に参加でき,あらかじめ決めた価格(予定価格)以内で,最も低い価格に決定する方法をいう。その際,質の確保の観点から入札条件を設定し,条件に合致しないものは入札の対象外とすることもできる。
Q17 関連当事者との取引(注記の基準)
宗教法人立または個人立の幼稚園が,学校法人化した場合,従来の設置者が無償で園地を20年以上貸与することを条件に学校法人の認可がおりたが,この場合で,個人立幼稚園の設置者であったものが,学校法人の役員になっていたり,宗教法人の代表役員が学校の理事を兼任していたりする場合,関連当事者との取引はどのように記載するか?
A17 参事官通知Ⅱ(6)③では,「関連当事者との取引が無償の場合又は有償であっても時価に比して著しく低い金額等による場合には,原則として第三者間において通常の取引として行われる場合の金額等によって重要性を判断し,注記すること。」とある。
したがって,質問の場合,参事官通知(別添2)注記事項記載例〈例1〉7(8) 理事との無償の土地使用を参考に記載されたい。
Q18 関連当事者との取引(注記の基準)
当年度に取引はないが,過年度の取引による貸付金残高等がある場合,注記の対象になるか?
A18 当年度に返済などの取引がなくても,期末日において残高がある場合には注記の対象となる。
Q19 関連当事者との取引(注記の基準)
記載を要する取引の判断基準として,協会Q&A第17号の「Q28」に,「役員及びその近親者との取引については100万円,その他の関連当事者との取引は帰属収入の1/100(その額が500万円を超える場合は500万円)」と例示されているが,大規模法人の場合,これでは金額が低すぎるので,例示以外の基準でもよいのか?
A19 学校法人の規模等に応じて,取引金額及び残高からみて重要性が乏しい取引については省略することが考えられる。その重要性については,各学校法人の実態に応じて金額を決定して差し支えない。
しかし,関連当事者との取引が無償の場合又は有償であっても取引金額が時価に比して著しく低い金額等による場合には,原則として第三者間において通常の取引として行われる場合の金額等によって重要性を判断して注記することとされていることに留意しなければならない。
なお,例示されているように,他の注記の重要性の基準に比べて金額が小さいことは,企業会計や公益法人会計基準も同様である。